スクイ縫い

スクイ縫いは、つり込みの終わった靴に、ウェルトを縫いつける工程です。
ハンドソーンウェルト製法は、この工程を手縫いで行うことを指す製法です。
つまり、この工程を紹介したより後は、ハンドソーンウェルトというブログタイトルは変えるべきなのかどうかという問題が生じますが、ここはひとつ、「ハンドソーンウェルト製法を用いた靴作り」を指しているんだと広い心で受け止めて戴き、このタイトルで続きも進めたいと思います。

左利きの作業写真で説明しています。
スクイ縫いの図解もまた、多くの方が紹介していらっしゃいますので割愛いたします。

ここでは踵部分にウェルトを縫わない、シングルウェルトをご紹介いたします。
さて、つり込みが終わり、余分な革を切り落とした靴。
つり込みの釘が縫っている最中に糸に引っかかるのが嫌なので、全てを内側に倒します。
その釘を抜きながら、手前に縫い下がって進みます。

シングルウェルトでは、縫いはじめ、右足でも左足でも、つま先を自分の方に向け、右利きは常に踵の左側、左利きは常に踵の右側から縫い始めます。
下の写真では左利きの縫い手は写真の左側にいて、ひと針目の穴を開けています。


スクイ縫いは、スクイ針という大き目の針を用いて先穴を開け、糸を通して縫っていきます。
スクイ縫いは、スクイ針という大き目の針を用いて先穴を開け、糸を通して縫っていきます。


スクイ針は、つり込まれた靴の裏面を、内側から外側に向かって、中底、アッパー、ウェルトの順で穴を開けます。 その3つの穴を縫いつなぐ作業がスクイ縫いです。
美しい縫い上がりのためには、この穴あけの作業がとても大切なのです。

理想は、中底にあけた穴が全て同じ角度で、アッパーに開いた穴の前の穴と次の穴との並びがきれいに整っていて、ウェルトに開けた全ての穴が斜面の同じ位置から裏の溝へ同じ角度でそろっていることです。
そのように全ての穴が同じ環境で開けられたものを縫い合わせると、理屈としてはきれいな縫い上がりになります。

実際にはつま先のカーブや糸のひき加減など他にも要素があり、それらがきちんとできていなければ、脇から縫い糸が見えてしまうなんてことも起こります。これは、糸が切れる可能性もありますし、縫いが緩みやすく、弱い状態です。
この、脇から縫い糸が見えてしまうことの対策として、縫い位置を内側にずらす、内スクイという方法を言う人がいますが、脇から見えてしまう縫い方をしていたら、内側でスクイをしても、見えにくくなるだけで問題の解決にはなりません。
きちんと縫えていれば、外側ギリギリで縫ってもスクイ縫いの糸が見えるようなことはありません。

スクイ針でアッパーに穴を開けた状態。ここにウェルトが添えられて穴を開けます。
スクイ針でアッパーに穴を開けた状態。ここにウェルトが添えられて穴を開けます。


ウェルトも一緒に穴を開けた状態。ウェルトは濡らしてあります。
ウェルトも一緒に穴を開けた状態。ウェルトは濡らしてあります。


両端に金針のついた糸を通し、半分にします。
両端に金針のついた糸を通し、半分にします。


2針目穴を開け、1目縫ったらウェルトが固定されます。
2針目穴を開け、1目縫ったらウェルトが固定されます。


3針目からは、ウェルトを引っ張りながら穴を開けます。ウェルトが縮もうとする力でより一層縫いが締まります。

縫いを行う際、糸にあやをかけるとより縫いが緩みにくくなる。

前の目を縫って出ている糸を、手前に倒し、その下からスクイ針を入れて穴を開ける。
前の目を縫って出ている糸を、手前に倒し、その下からスクイ針を入れて穴を開ける。


スクイ針を抜きながら、ウェルト側から金針を通す。この時、中底側に出た金針は糸の下になっている。
スクイ針を抜きながら、ウェルト側から金針を通す。この時、中底側に出た金針は糸の下になっている。


中底側の糸の先の金針を、ウェルト側から通された金針の手前に差し込みます。
中底側の糸の先の金針を、ウェルト側から通された金針の手前に差し込みます。


中底側から通した金針の糸を奥に倒し、奥側を通っているウェルト側から通した金針の上に掛けます。
中底側から通した金針の糸を奥に倒し、奥側を通っているウェルト側から通した金針の上に掛けます。


この状態のまま金針を引き抜き、しっかりと引きます。
こうすることで、糸が緩みにくくなります。
この方法は、間違えると途中で結び目が出来てしまうことがあります。
初めての方によくある間違いは、一番最初に手前に倒した糸が、金針の下になってしまっていることです。

この方法は、イギリス人の職人さんの仕事で初めて見ましたが、その後見た、山靴高橋の今は引退された職人さん(2005年当時70歳代)もこの方法で縫っていました。
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