すくい縫いの金針、縫い針加工

スクイ縫いは2種類の針を使って行います。1つはスクイ針という、糸を通すための下穴を開ける針です。しっかりとした柄が付いていて、中底、アッパー、ウェルトに穴を開けるために必要な強度があります。もう一つの針というのは、下穴に糸を通すために糸の先につける縫い針です。布地を縫う裁縫では、糸先につけた縫い針だけで縫っていきますが、革は硬く、厚みもあるため、縫い針で一気に穴を開けながら縫うことは手ではできませんから、下穴を開けるスクイ針と、糸を通して縫うための縫い針があるというわけです。私は初めに教わったものが金針なので、今までも今も金針を使用しています。

この縫い針の作り方をご紹介しますが、スクイ縫いの縫い針にも、色々あって、水鳥の羽や、毛針を使用する職人もいらっしゃいます。ただ、その仕事を見たことはあるのですが、説明ができませんので、ここで紹介するのは金針の加工です。

使用するのは「ふとん針」という針です。決まっているわけではありませんが、スクイ縫いは太めの糸で行われ、チャンを引いた糸が交差したものを引っ張るにも力が掛かります。そのため、針の糸通の穴が大きい方が縫い糸を固定するのに適しています。

使用する道具はこの4つです。ワニ、ライター、ふとん針、紙やすりです。



ワニの柄の後ろ側でふとん針を挟み、ライターで暖めながら針を曲げます。曲げた針のカーブが上に向くようにしたとき、糸通の穴が上を向くように曲げた方が縫う際に糸への負担が少ないので、そのように曲げるためにはためにちょっとコツがあります。



まず、片方の手でワニを逆さに持ち、ワニの持ち手、後ろ側でふとん針を挟みます。その際に、糸通の穴を上に向け、その状態のまま曲がるようにもう片方の手で針を軽くたわませます。軽くたわませた状態を保つようにワニを持つ手に力を入れますが、あくまでも軽いたわみを保つ程度の力加減が適当です。



針を軽くたわませた状態を保ったまま、ライターで全体を炙ります。針が曲がる温度まで温まるのにそれほど時間は掛かりませんので、ライターか針を動かしながら、全体をまんべんなく加熱しましょう。一箇所に熱が集中してしまうと、先に温度が高くなったところだけが曲がってしまい、使えなくなってしまいます。



全体にカーブしてきたら、曲がりの甘いところを意識して温めます。糸通の穴がある側の方が太いため、曲がりが足りなくなりがちです。針全体のカーブの中心はもちろん針の中心ですが、糸通の側も直線のままでは使いづらいです。また、針先の方は、後で5、6ミリ切ってしまうので、先端まで曲げる必要はありません。



適度に曲がったら冷まします。



針先を5,6ミリ切ります。



切ったら、その断面の下側を削って斜めにします。
上側に出たバリを削り落とします。



完成です。

実際に使ってみて、引っ掛かりを感じる部分があれば、その部分にもう少しカーブを付けてあげると良いでしょう。甲革を手縫いする、モカ縫いやスキンステッチを行う際の縫い針も、使用する針は細くなりますが、同じようにしてカーブを付けてあげると使いやすいです。



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道具加工について

加工した道具が使いづらい場合、必ずどこかに原因があります。その原因をその都度きちんと明確にしておくようにすることが大切です。靴学校921では、単なる道具加工の仕方を教えるだけで終わりではなく、使いやすい道具で作業することの楽しさまでも教えられるように、道具の加工はこだわりを持って授業します。縫い針も、小さい物は曲げた状態で売られている物がありますが、大きい物はありませんので、自分で加工するしかありません。また、自分の好きな曲がり加減というものもあります。こうした細かい道具の加工を、自分の思い通りにできるようになっておくと、靴作りの技術の上達も早まります。
靴学校921
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