スクイ針の加工

すくい縫いで使う針には2種類あります。一つは今回ご紹介する穴を開ける用。もう一つは糸の先につけて縫うための金針です。金針の加工についてはこちらをご覧下さい。



このスクイ縫いの下穴を開ける針を、スクイ針といいます。針はどうしても、初心者のうち折ってしまいやすいです。その理由の一つに、スクイ針の加工が不十分ということがあります。鏡面のように磨き上げ、針先の切れ味良いスクイ針は問題ありませんが、磨き上げが甘い場合や針先の切れ味が悪い針では、穴を開ける際に革に引っかかり、針に必要以上のストレスが加わって、折れてしまいます。または、針が折れないまでも、穴を開けるときにも、針を抜くときにも抵抗が強く、スクイ縫い自体のスピードも遅くなります。快適な作業のためにもきっちりと道具加工を行いましょう。


スクイ縫いの加工で使う道具です、ワニ、ハンマー、紙やすり、スクイ針の柄です。針のカーブの角度を変えたい場合には、アルコールランプが必要で、その際はワニがもう一本か、別のペンチも必要になります。




最初は、針の根元の折り方です。スクイ針の柄に差し込む部分は、柄の差し込まれる部分よりも長いため、10から15ミリほど短くカットする必要があります。
初めに、ワニの根元でしっかりとスクイ針の根元を挟みます。このとき、ワニの鏡部分の真上に針が来るように、きっちりとワニの根元で挟んでください。




わにの鏡部分を机の端にしっかりと置き、ワニからはみ出しているスクイ針の根元にハンマーを振り下ろすことで折ります。一気にパキンと折れる場合もありますが、グニャっと曲がってしまった場合には、針をひっくり返し、逆側から叩いてください。数回繰り返すと折れます。




折った根元はとても太く、柄に入らないことがほとんどです。




根元部分を紙やすりで削って細くし、柄に収まる太さまで加工します。針の太さ次第ですが、この作業に結構時間がかかります。




スクイ針のカーブの角度を変えます。必須の工程ではありません。自分の好きな角度が見つかるまでは、購入したままの角度でよいでしょう。
アルコールランプが必要なのは、スクイ縫いの金針と違い、両手にワニなどのペンチを持って針を曲げながら加熱する必要があるからです。カーブの最も強い辺りを加熱し、黄色味がかってきたら曲げます。加熱しすぎると青くなってしまい、軟くなってしまうので注意しましょう。そうなると使い物になりません。グニャっと曲げるわけでは有りませんから、曲げる方向に力をいれ、その状態を保ったまま火から外し、手はそのままで少しさめるのを待ちます。見本となる針、又は新品の針と比較して、角度を確認すると良いでしょう。




針を磨いていきます。紙やすりは今回、180番、240番、400番、600番、800番、1000番、1200番を用意しました。最も時間をかけるべきは180番で、目が細かくなるほど磨く時間は短くなっていくのが通常です。
磨くとき、紙やすりを下にして針を動かしながら磨く方法と、針を固定して紙やすりを動かす方法があります。針を動かす場合は、一点ばかりを磨くことがないように注意しましょう。常に針を動かしながら、色々な角度で磨くようにします。
紙やすりを動かして磨く方法は、画像のように針先をテーブルに固定して磨きます。この方法は、先に紹介した針を動かす方法に比べて一点に力が加わり難いため、作業はとてもしやすいです。針先がテーブルから離れると、指を切ってしまうことがありますから、注意しましょう。それから、難点は手が汚れることです。また、テーブルを傷つけないように、画像のようにテーブルに作業用のビニール板を敷くか、針先を革に当てるなどしましょう。




主に磨かなくてはいけないのは、先に説明をした針のカーブの外側です。それは、針を使うとき、革に押し付けられる側であるためです。逆のカーブ内側では、少々磨きが甘くてもたいした影響はありません。とはいえ、全く磨いていないと、針を抜くときに抵抗が生じますから、加減が分かるまでは一生懸命磨きましょう。
カーブの外側と違い、内側を磨くのは、針先を机に固定する方法が圧倒的にやりやすいので、この方法で行います。外側に比べて針先がテーブルから離れてしまいやすく、怪我をしやすいので、針先はしっかりとテーブルに固定するよう注意してください。




向かって右側は私が今スクイ縫いで使っているスクイ針です。左が今加工している針で、240番まで磨き終えたところです。ここで見ていただきたいのは針先です。よく見ると、左の方はいかにも針という感じの尖った先端です。右は、全体が鏡面に仕上がっているのに、先端だけ光り方が鈍いと思いませんか?これは、針の先端をいわゆる針ではなく、刃のように加工しているためです。




どのタイミングで刃付けを行っても良いのですが、最初は240番くらいで削ったほうが良いので、丁度240番で針体を磨いたところですから、このタイミングで刃を作ります。刃の角度は包丁と同じくらいでいいのですが、包丁と違って針はカーブしていますので、針を持つ角度は上の画像のようになります。



針のカーブの外側、内側、針先の順で磨く作業を、紙やすりを400、600、800、1000、1200とすすめていくと、徐々に針に写る自分の姿が鮮明になってきます。上の画像は、左が未加工の新品、真ん中が今回加工した針で、右が私がいつも使っている針です。この先の作業として、磨きの仕上げ剤で磨くことも出来ますが、これだけ鏡面加工してあれば問題ないでしょう。きちんと鏡面に苦きあげてあるのに、針を実際の革に刺してみて刺さらない、刺しにくい場合には、針先の刃が切れていない可能性が高いです。刃先を研いで再度試してみてください。
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